就職活動を解明してみよう
不祥事を抑止するような意見も必ず出ているはずである。
そうした意見は、反組織的なものとして抑圧されたに違いない。
そうした意見をいう者は、「問題児」というレッテルを貼られた可能性がある。
個人の意見をさまざまな手段を使って抑圧することは、会議の案件が一部の成員にとって重要であるほど強力になる。
さして重要でない案件に関しては民主的な手続きがとられ、きわめて重要な案件に関しては非民主的な手続きがとられる。
日本の組織は全員参加の平等思想に基づいてつくられている、とよくいわれる。
そのような組織も存在するかもしれない。
今日の実態はそうでない場合も多いであろう。
形式的には全員参加の形をとっていても、運用はそうでない場合がある。
情報操作などによっていくらでもそうすることはできる。
さらにこれからみるように、一部の成員によってインフォーマル・グループが形成され、組織の重要な意思決定は実質的にそこで行なわれる場合もある。
インフォーマル・グループとは組織の系統とは関係なく成員のなかに自然に発達する集団で、右でみた結託がその例にあたる。
われわれがここで問題とするのは、主として、もともとは人間関係上の「好き嫌い」を基にして形成されるグループ(友好集団)である(しかもこの「好き嫌い」は、目上の者からみて目下の者が単にロボットのように従順かどうかに起因している場合が多い)。
現代の公式組織において、他の成員に対する好き嫌いをあからさまにすることは許されない。
したがって、このような集団は公式的集団(組織の公式的構造のなかに位置付けられた集団)になることはない。
この種のインフォーマル・グループも、その影響力が大きくなると、利益を求め加入する者も出てこよう。
そうすると、友好集団は次第に利害集団に変貌する。
公式組織における個人の失敗や不正に対する他の成員の非難から身を守るために加入する誘因も生じてくる。
困ったときには所属するインフォーマル・グループに庇護してもらおうという誘因である。
このような理由で加入しても、人間の弱さといえようが、競争の激しい社会では庇護してくれる他に個人が親しみを持つ場合は多いであろう。
もちろん、個人がインフォーマル・グループから庇護してもらうためには、そのグループの他の成員の失敗や不正を隠蔽ないしは正当化するときに手助けをする必要がある。
したがって、インフォーマル・グループが形成されると、不正や失敗が容易に隠蔽される。
不祥事には、必ずインフォーマル・グループがかかわっているはずである。
インフォーマル・グループは私的な集団なので、まったく私的な貸し借り、私的な権威、私的な感情の上に成り立っている。
公式な組織では口にできないことでも、そのグループ内では容易に発言できる。
公式なルールや「民主的な手続き」とは無縁な集団であるため、公式組織の観点からはどんなに非常識といえることでもそこで決定され、それを実現するためにそのグループの全員が同一歩調をとることがありうる。
また集団化によって個々人の独立性・責任が低下ないしは暖昧化するため、そこでは極端な決定がされやすい。
この集団にも長となる個人がいて、その私的な理由、また純然たる好き嫌いが、そこでの意思決定を大きく左右する。
40歳代、50歳代のれっきとした成人のなかに、独立して判断することができない者もいるが、その個人がインフォーマル・グループに属していて、その長などの意向(究極的には自分の利益)を気にするからである。
完全に私的な集団であるにもかかわらず、インフォーマル・グループの決定は多数決制・心理的圧力などを通して公式組織の意思決定に大きな影響を与える。
したがって公式組織がいかに全員参加の民主的な規則を明記していても、インフォーマル・グループが形成されると、その規則は画に描いた餅となる。
インフォーマル・グループは公式組織の規則を画餅化するために形成されると言い換えてもいい場合があろう。
その定義上、ひとつの公式組織の全成員が同一のインフォーマル・グループに属することはない。
インフォーマル・グループがその外にいる者を意識的に差別するために形成されることを意味する。
定期的な勉強会や宴会を通して形成される場合も多い。
T信用組合と安全信用組合の破綻処理に絡んで十指に余る大蔵官僚の接待漬けが公になったとき、彼らはインフォーマル・グループに属していたことが指摘された(K)。
そのグループに入った者のみが羽振りをきかせ、それから漏れた人間は出世もおぼつかなくなったといわれている。
こうした事態が若手を白けさせ、やる気をなくさせている。
最近の若手は、直接会って議論しても意味がないといって、政策論争をファックスでやり取りしているという。
インフォーマル・グループの形成は組織の成員の仕事に対するモラール(士気)に大きく影響する。
ひとつの公式組織のなかに、複数のインフォーマル・グループが形成されることもある。
その場合には両者の相対的大きさ(人数比)が非常に重要になり、グループ拡大のための工作もなされるかもしれない。
またインフォーマル・グループ間のギブ・アンド・テイクも行なわれる可能性がある。
多くの場合は、最大のグループの公式組織に対する影響力が顕著になる。
本章の冒頭で触れた不祥事の一部に関連して、密室での意思決定が問題にされている。
おそらくすべての不祥事の背後には、密室での意思決定があろう。
密室で隠蔽工作や虚偽情報の公表が決定される。
ここで重要な働きをするのがインフォーマル・グループである。
日本の大組織のトップ管理者はインフォーマル・グループに属している場合が多いであろう。
またそうでないとトップ管理者になれない場合も少なくない。
そのグループの上層の2、3人でまず意思決定がなされる。
いとも簡単に同一グループの意思決定となる。
インフォーマル・グループには民主的な規則などない。
グループ内の権威や人間関係によって物事が決まる。
公式組織の方針も、多数決・心理的圧力などを通して先の2、3人によって決定されたものとほぼ同じになる。
このようにしてほんの2、3人(場合によっては1人)の意見が、公式組織の方針となになる。
比較的民主的な公式規則を持った大組織においても、きわめて重要な意思決定を上層のほんの2、3人で行なうことができる。
ごく少数による意思決定が、インフォーマル・グループを通して多数意見に変換される。
インフォーマル・グループはその上層を占めるメンバーの意見の増幅装置の役割を果たす。
そのグループ内ではギブ・アンド・テイクの関係が重要なので、隠蔽工作や虚偽情報の公表といった案でも、反対する者もなく容易に賛同を得ることができる。
反対しないことによって、自分の「あまえ」も将来認めてもらうことができる。
こうして多数が獲得されれば、公式の会議においても同様な案が採用されることになろう。
公式の会議で反対意見の出ることを抑止する有力な方法には、情報提供を操作することも含まれる。
トップ管理者には多くの情報が集まってくる。
可能ならば、トップ管理者の方針とは反対の意見に結びつくような情報は公表することを差し控える。
反対者に有利となる情報は提供しない。
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